STAY玉の湯

STAY玉の湯のコンセプト

新しい温泉保養地の建築
暮らすように滞在できる場所

由布院温泉の文化でもある保養滞在。従来の保養や湯治と聞くと少し古臭いイメージを感じるが、「STAY 玉の湯」では新たな保養としてのスタイルを体験できる施設を目指した。

旅行というよりも暮らしに近い滞在施設になるように各部屋にはキッチンが併設しており、簡単な調理が可能なようにしている。温泉は源泉かけ流しで、温泉に入り湯布院の暮らしを感じられる宿泊施設になっている。

長期滞在を目指した施設であることから、様々な利用者が想定される。今までの保養では持病を持っている人などは旅行に行きにくい環境だった。

しかし「STAY 玉の湯」では看護や介護の資格をもつ人もおり、隣に内科のゆずの木クリニックがあるので、身体に不安や持病があっても安心して過ごせる。由布院温泉を暮しながら楽しんでもらう。苦しくなく、居心地の良い部屋やラウンジ。

自由で時間の拘束などがない自分らしい過ごし方が出来る場所。そんな建築になるように「STAY 玉の湯」の設計を行った。

集落のような佇まい

敷地は湯ノ坪街道から少し入ったところにある静かな住宅地にある。周囲には住宅が多く点在し、平屋や2階建ての建物が多くある。
また、湯布院は盆地であることから周囲を山々に囲まれており、その稜線が湯布院の景観の特徴の一つとなっている。周辺環境の特性から周辺の景観に馴染むように1つの大きなボリュームで構成する事を避け、各室のボリュームを抑えて、小さな建築が集まって風景を作る「集落」のような建築を目指した。

周囲に溶け込むボリューム構成

敷地形状の特性を活かし、建物の平面形状は道路に合わせて雁行させ、道路側への圧迫感を軽減させる平面形状とした。地域に馴染む建築を目指した事から、敷地本来の高低差も極力活かすような計画とし、3つのフロアレベルで計画する事で、敷地の高低差をそのまま建築に取り入れる計画とした。

山の稜線と屋根

ボリュームを抑える為、客室の屋根は棟を中心に折れ曲がる屋根とし、住宅地への圧迫感を軽減する計画としている。

東側に面する客室の形状は由布岳の特徴でもある頂上が2つあるような山の稜線をイメージし、2つの客室の棟が寄り添うような形状
とした。建物全体の屋根形状は湯布院盆地の特徴でもある山の稜線を表現し、様々な勾配の付いたボリュームが調和しながら新たな風景を作り出している。

由布岳の眺望

建物の配置や角度、屋根の高さ、開口の大きさ、中庭の位置など細かな検証を重ねた事で、どの客室からでも湯布院のシンボルでもある由布岳を眺められるように計画している。

3つの庭

湯布院に滞在しているときに感じる風は心地よさだったり、 森の香りを運んできたりと心を落ち着かせる風を感じる事が多い。風は視覚的には見えないが、木々が揺れることや、 風鈴などの音で気づくことが出来る。「STAY 玉の湯」では湯布院の風を感じられるような3つの庭を敷地内に点在させ、滞在する人が湯布院の風土を感じながら、 心身ともにリフレッシュできる施設を計画した。

自分の庭

好きな植物を自宅から持ってきたり、湯布院で購入した植物を育てたりできる自分の庭

共用の庭

四季を感じたり、滞在する人同士が交流する庭。由布岳の見える中庭は憩いのスポット。

まちの庭

近隣の人々や、観光で訪れた人と触れ合う事のできる庭

ラウンジ

宿泊者が自由に滞在できるスペースであり、来客者との交流の場になり多くの人の利用が想定されたので、切妻屋根のような単調な空間にせず、建物のコンセプトを感じられる片流れ屋根を組み合わせた立体感のある空間とした。 約4m近くある天井高のあるラウンジは開放感のある空間となっている。 食事コーナーと談話コーナーを壁で区切るのではなく、天井高さの異なる空間で領域を分ける事で、用途の違う2つの空間がありながら、一つの空間としても利用できる計画としている。

温泉

天井の高い空間とし、 由布岳の眺望や開放感のある内湯になるよう設計した。 天井には米ヒバを使用し、木の温もりを感じられる浴室になっている。 露天のある大浴場とヒノキの無垢材を使用した大浴場の2種類がある。それぞれのタイルの色合いを変える事で、 男女入替時に違った空間に感じるように計画した。敷地内から湧く温泉を引き込み源泉かけ流し。泉質はアルカリ性単純温泉で柔らかな肌触りが特徴。

客室

全客室から由布岳が見えるように計画している。 各客室にはサンルームを計画し、 由布岳を眺めながらゆっくり滞在できる空間とした。 通常は開口部にカーテンを付けるが、建物全体が閉鎖的になってしまう為、サンルームと寝室の間にロールスクリーンを計画したことで、地域との繋がりに配慮した計画としている。 また、 外部と寝室の間のサンルームが空気層を作ることで、冬季の厳しい環境にも温熱環境が乱れみくいように配慮した。

天井は建物外形と同様の勾配天井とする事で、長期滞在でも飽きの来ない空間にしている。長期滞在型の施設である事から、滞在中にベッドで過ごす方も居ると想定されたので、客室の照明計画ではベッドで寝ているときに目線に直接光源が入らず眩しさを感じさせない間接照明を採用した。

スタンダードルーム (room4~9)

 

天井高は3m以上とし、 長期滞在をしても圧迫感を感じさせず、ゆとりのある空間になるように計画している。 寝室には本棚や机を計画する事で、長期滞在時に自分の好きな空間にカスタマイズできる客室となっている。

スタンダードルーム和室 (room1・2)

現代では少なくなった和室。 ROOM1.2 では琉球畳のある部屋を計画し、寝転んだりリラックスして過ごせる客室を計画した。窓からは由布岳や坪庭を楽しめる客室となっている。

スイートルーム (room3・10)

リビングを兼ね備えた客室となっており、55 ㎡ ~65 ㎡とゆとりのある客室を計画した。長期滞在時にご家族の面会なども部屋でできる客室になっている。 他の部屋よりも庭を広く計画したことで、四季の変化を楽しめる客室となっている。

 

設計