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  2. 由布院における’’間’’の考え方

由布院の目指すべき姿 ~What Yufuin should aim for~

これから由布院で起こっていく『保養×宿泊』の新しい考え方・取組について由布院で宿を運営する桑野和泉と建築家の松岡恭子の2人が語っています。

桑野和泉
1964年大分県湯布院町(現:由布市)生まれ。家業の宿「由布院玉の湯」の専務取締役を経て、2003年10月、代表取締役社長に就任。町づくりなどの市民グループの代表、世話人や、NHK経営委員を歴任し、現在、一般社団法人由布院温泉観光協会会長、公社団法人ツーリズムおおいた副会長。2012年6月から大分銀行社外取締役を務める。

松岡恭子
九州大学卒業後、東京都立大学大学院、コロンビア大学大学院で修士課程修了。建築家として、街に新風を吹き込む建築空間、人々の屋外活動を豊かにする公共空間を国内外で生みだしてきた。コロナ禍がもたらす社会変化への危機感から、福岡の都心を九州の文化発信ハブとする社会実験「One Kyushu ミュージアム」を発案、食や伝統工芸などの多彩な専門家を迎えて総合プロデューサーとしても活動中。

保養地の在り方を再認識する 

(桑野)由布院が保養の場所としてお客様を迎え始めて50年が経ち、中谷健太郎氏や父である溝口薫平を中心に由布院を広めてきました。始まりは1924年に本多静六先生の講演をもとにまとめられた由布院発展策に始まります。
100年の歩みを経て、今由布院がもう一度「
保養」に向き合い、まちとしてどう人を受け入れていけるか。見つめなおす時期に来ていると思っています。

(松岡)由布院は私の中でも特別な場所です。桑野さんが先ほど挙げられた中谷健太郎さん、溝口薫平さんが50年かけて作り上げてこられた「由布院」というブランドは、今や誰もが憧れる場所となっていると思います。
桑野さんからお話を伺い、私なりに由布院のどこに魅力があるかを考え直し、それは「風通しのよさ」なのではないかと感じています。

由布院の森構想について 

(桑野)2022年に父が始め、ようやく形になった由布院駅前と大分銀行のポケットパークの2つの拠点から始まる『小さな森づくりプロジェクト』。緑によってお客様を出迎え、地域の子供たちも緑に包まれて成長し、地域の人も呼応して緑が増えていく。そんな思いを込めて始めたプロジェクトです。せっかく由布院を選んで来ていただいた方々をまち全体が緑でお出迎えしていくのが由布院のスタイルだと思っていってほしいです。

(松岡)2022年に健太郎さんと薫平さんの講演の司会を務めさせていただいた際、お二方がこの50年間何もしてこれなかった。とおっしゃられていたことがとても印象深く残っています。
観光のモデルとして多くの自治体から視察を今なお受け入れられる状況にも拘らず、あの言葉が出てくることに驚きました。
「小さな森づくりプロジェクト」は景観も皆さんで決められている由布院だからこそできるまちの在り方が地域の方々に浸透し、より良い景観となっていくことが瞼を閉じれば見えてくるようでワクワクします。

由布院との関わり方’’間’’の考え方について 

(桑野)由布院にとって私は皆さんの間を紡いでいく人になる必要性を感じています。それは皆さん由布院に来やすくなることもそうですし、一緒に何かを作っていくこともそうです。もちろん地域の方との緩衝になることもそうかもしれません。由布院の翻訳者として由布院が外とつながる「繋ぎ役」をこれからも引き受けていくつもりです。

(松岡)和泉さんがよく「暮らしの中の由布院」という言葉を使われますよね。建築の世界でも間というのは非常に重要で、何かと何かと繋ぐもの人やモノの関係性や距離感を表すときにも使われます。和泉さんがされていることを「間のデザイン」と捉え、私も大きな意味での「間のデザイン」をお手伝いしていけたらと考えております。

Yufuin STAY構想について

由布院のこれからを考えたときに滞在型保養をもっとわかりやすく打ち出していく必要性があると考え、「Yufuin STAY」という取り組みを広げていけたらと考えています。

まち全体で日常と非日常を楽しめる 

(桑野)由布院を長期滞在した際に、色々な過ごし方の可能性があると思っています。それは1泊や2泊では味わうことのできない暮らしに近いものだと考えています。宿の外で食べる食事や、そっと身を置くために立ち寄るカフェ。物思いにふけられるベンチ、そっと由布岳を眺められてもいいかもしれません。そんなアンダーツーリズムを楽しめるのが由布院のまちの良さだと思います。

(松岡)まち全体を楽しむのはとても魅力的で、短期の宿泊では感じることのできない時間の流れ、地域のにおいや空の色の移ろいなど、日常生活では味わえない要素をたくさん含んでいるんだと思います。
そこで重要になるのが、いかにその情報にたどり着けるか。情報過多な今でも、うまくまとまっていない情報を集めるのは大変なことです。

由布院の形とは 

(桑野)由布院温泉が保養の場所としてお客様を迎え始めて〇年が経ち、中谷健太郎氏や父である溝口薫平を中心に由布院を広めてきました。
コロナ禍で考えた由布院の役割とは、保養地。由布院が目指した保養地の在り方をもう一度考え直して、訪れる皆様を迎えていきたい。

(松岡)和泉さんを中心に多様な方が由布院を訪れ触媒となって新しい由布院を作り上げていく雰囲気がぷんぷんと漂っています。由布院らしい新しい観光の形を、無理のないスピード感で作り上げられていく。多くの方が関わることができる「間」を持っていることが由布院の素晴らしさなんだと思っています。